虹をつかんだ男のココだけの話

虹をつかんだ男のココだけの話「変化」

ここで、合気を教わり始めて数年が経つ。
“弾力”をカギに練功を積んできたのだが、最近自分の体が変わってきたように思う。
前は、相手と接触する事で初めて一本のゴムが発生する感覚があったのだが、近頃は、日常生活を送っている時でさえも、ふと気が付けば、体全体に“弾力”がみなぎった感覚を感じる事が出来る。
長年練功してきた“ゴム感覚”が体に馴染んで、時や場所を選ばずに容易に再現出来るようになったのだ。
これは、私の合気がレベルアップしたことの証であろう。
前まではゴムだったので、“弾力”を出すためには、一旦引く作業が必要で、引くまでは“弾力”が発生していないため合気が起こる事はない。
しかし、意念だけで“弾力”が充満している状態を作れる様になると、相手から触れられた瞬間に合気が発動するようになる。
つまり、すでに引いているゴムを持たせる事が可能なのだ。
また、存在しているだけで体の中が“弾力”でいっぱいで、他の力が入り込むスキマがないため、相手の出した力は、そっくりそのまま相手に返還される。
相手が私に対して影響を与える為に出した力は、私には何一つ影響を及ぼす事なく、私の中にある“弾力”に跳ね返される形で相手自身への攻撃に使われるのだ。
これらの結果は、“弾力”があれば当然起こる事で、起こらない方が不思議な極めて当たり前の理屈である。
しかし、「まさか」の結果が起きたと混乱する人が続出するのは、人の体の中が“弾力”で埋め尽くされているという仕組みを普通の人は知らないからである。

松原塾長が常日頃からおっしゃっておられる通り、合気の上達は、合気のカラダ作り無くしては有り得ないのだ。
小細工などいらない。
この根幹を大切にこれからもより良く変化していきたい。

虹をつかんだ男のココだけの話「講習会in東京」

3/31(日)に第一回全国講習会 in 東京が開催された。
私も久しぶりに新幹線に乗り上京した。
ここでは、北海道から大阪まで30名ほどの塾生が集まり合気のタネの獲得を目標に一致団結して練功が行われた。
練功は2班に分けて行われ、A班は、いつも塾に参加していて、合気のタネの感覚をすでに知っている人で、その感覚を“いつでも、どこでも、誰とでも”出せるよう、再現性を上げるべく、相手を変えつつ繰り返した。
また、B班は、個人レッスンの人や、塾に入って日が浅いため合気のタネの感覚に乏しい人や、感覚自体知らない方々で、その人達にも、1日で感覚を確実に掴んで、使いこなせるレベルに上がってもらうための練功環境を用意した。
それは、塾長から出される課題を迷う事なく遂行出来るよう、感覚の取れる研究生が一人ずつ付き、分からない事を丁寧に説明するのはもちろんだが、必要な感覚を何度も体感する事で自分の物にしてもらい、徐々にレベルを上げながら、A班同様に、初級、中級、上級と全ての課題をこなすという事であった。
そして、これらは、終始、副長と院生がフォローするという万全の体制で執り行われ、たった3時間の講習会ではあったが、皆にとって密度の濃い練功になったと思う。
実際に、来た時には不安な顔をしていた人も多かったのだが、帰る時には皆さん喜色満面で、満足度が高かったように思えた。
まさに、「楽しい達人集団を目指す」を地で行く講習会であったと思う。

講習会の後は、居酒屋で懇親会も催され、私は二次会も参加して、先輩方と親交を深めて帰って来た。

虹をつかんだ男のココだけの話「飛べる 2」

合気に飛べる感覚が必要であるのは、そこに発生する弾力が相手を動かす動力源となるからである。
弾力を自分側に使えば、自分が動くし、相手側に使えば、相手が動く事になる。
また、自分に飛べる感覚が発生している場合、相手も同じ感覚が発生している。
自分の足裏から相手の足裏まで通したゴムを引き合うことで発生するので、お互いがそのゴムに頼りながら一つの物体として立っている状態になっている。
そして、合気の現象化が起こっている場面は、手や腕などの接触点に影響を与えて事を起こしているように勘違いしがちであるが、実際は、相手の足までゴムを張り、自分の体の中でゴムを伸ばしたり、縮めたりしながら、相手を足元から揺さぶり、バランスを崩させて、自分の手にすがらせている状態なのである。
そして、飛べる感覚が発生しているということは、相手と足までゴムで繋がっていて、そのゴムでお互いの重心を上げながら体を浮かせているので、内部に弾力が発生していて、尚且つ、居着いていない状態といえる。

しかし、この飛べる感覚は作るのは簡単なのだが、維持するのがとても難しいのである。
知っている人に教えて貰えば、誰でもすぐ出来るようになるのだが、すぐに忘れてしまったり、飛べると感じる体勢を作ったものの無意識に飛べない体勢に戻ったりしてしまい持続するのがとても難しいのだ。
これには、切実な理由がある。
というのは、二足歩行をする人間としての本能が体勢の不安定さを許さないのである。
通常、人が立っているときに重心は、両足の足裏とその間の部分にある。
そこから外れると転倒してしまうので、絶えずその面に納めて行動するように習慣付いている。
重心を面から外さない事が訓練され過ぎて無意識化してしまっている為、飛べる体勢を作ったとしても、気がつけば、重心が戻ってしまっていたり、そもそも、飛べるほどに重心を外せていなかったりしてしまうのだ。
だから、その習慣から脱却するには、飛べる感覚が無意識化するほど刷り込む必要がある。

虹をつかんだ男のココだけの話「飛べる」

前回、ゴム感覚を発生させる方法や、感覚を養うコツを書かせてもらった。今回もまた、ゴム感覚について、気付いた事を述べたいと思う。
ゴム感覚を認識出来るようになると、それを使っての合気揚げが可能になる。これが出来る様になった時、あなたは、筋力の呪縛から開放されるだろう。
合気は、筋力で、タイミングを見計らって、テクニックを駆使して掛ける。のではなく、自分の弾力で相手が出してきた力を一旦呑み込み、その力を弾力に変えて相手にそのまま返しているだけなのだ。
ゴム感覚を合気に使えるようになった時、今まで行なっていた“小手先による間に合わせ”とは全然異なる、“根本からの劇的に変化”に気づくはずだ。

しかし、このゴム感覚は、実物のゴムではないため、伸びるも縮むも自分でイメージしながら、その時の実感も自分で感じる必要があるのは、前回述べたのだが、まだ他にも上手に扱うには、コツがいる。
例えば、相手の足から自分の足まで繋がっているゴムを使って合気揚げしようとする時、慣れていない人はゴムを引こうとする時、必ず、相手と自分の接触点である手を引いてしまう。これが起こる原因としては、相手と繋がっているという事を信じられていないため、自分側のゴムしか自由にならないと思っているからだ。そして、中のゴムを引くつもりで、勢い余って外側の筋肉まで使ってしまうので、自分では手を引いているつもりはないのだが、結果的に相手を筋力で引っ張る事になり、相手がそのまま付いてきたり、手を離されたりして不発に終わる。

そうならないために、合気練功塾では、相手と繋がる時は、“飛べる”感覚を養う練功をしている。具体的に言えば、相手と一本に繋がったゴムを、自分から引くのではなく、相手に引っぱってもらい自分が相手の方に飛んで行くのを我慢している状態を作るのである。この状態は、お互いに一本のゴムを引き合っている状態でもあるので、その状態を自分が解放した場合、相手はそのゴムの緩みの乗せられてしまう、そして行き先を“上”に設定しておけば、勝手に揚がってしまう事になる。
自分の力は全く使う必要がないのだ。

虹をつかんだ男のココだけの話「意念」

合気には、弾力が必須で、そのために、まずはゴム感覚を作り、操れるようになる事が必要である。

ゴム感覚は、誰にでもあるモノなのだが、普通に生活する分には特に必要のないモノなので、普段の生活で会う人達は、まず持ち合わせていない。だから、我々の思考回路でゴム感覚に行き着く事もなければ、縁あった人に偶然おしえてもらえる事もない。普通は知らなくて当然のモノなのだ。

 

しかし、合気に於いては、無いと始まらないモノである事は確かで、だから練習して手に入れるのである。やり方としては、手の平同士をくっ付けたり、離したりする事を繰り返して、手の平の間にゴムが発生するのを感じる事から始める。

このゴム感覚は、先述した通り、誰にでもあるモノで、誰にでも発生するのだが、初めての発生を感じるのにすごく個人差がある。短い人は数分で感じるのだが、長い人は数日、数週間かかったりする。

この差はいったいどこから来るのだろうか?答えはその人が持つイメージの差であろう。「手の平の間にゴムがある。」と本気で思えるかどうかの差である。ただ単純にくっ付けたり、離したりを繰り返したところで、そこにゴム感覚が発生する事はない。そして、この時にその動作を行うより大事な事がある。それは、「手と手の間にゴムがある。」と強く信じ込む事である。

元々何もない空間にゴムを発生させるには、単にイメージ上でゴム思い描くだけでは、不十分なのだ。

なぜなら、現実世界で輪ゴムを拾った場合、そのゴムを引っ張れば伸びるし、その状態を解放すれば勝手に縮む。ところが、イメージ上で引っ張ったゴムは、勝手には縮まないのである。実物のゴムは伸ばせば縮むという性質を元々持っているが、イメージ上のゴムは伸ばせば縮むというイメージは自分が付けなければ持たせる事が出来ない。逆に言えば、引いて縮むからイメージしているモノがゴムであると脳が認識するのであって、引くしか出来なければ、脳は弾力のない紐としてしか認識出来ないのだ。だから、ゴム感覚を発生させる場合には、ゴムのイメージにゴムの働きを付帯させなければならない。これがイメージ力を向上させる“肝”なのである。

 

この実感を伴うイメージの事を“意念”という。合気の現象化、上達において、この“意念”の獲得、強化が重要である。