とある塾生の雑記

とある塾生の雑記10 深化する合気練功塾

以前、松原塾長が自身を合気という険しい山の登攀ルート開拓者に譬えておられました。誰でも合気が使えるようになるために塾生の進捗状況を確認しながら、より勾配の緩やかなルートを開拓していく。最近このルートナビが頻繁にアップデートされていくため数回練習を休むと浦島太郎状態になることもありますが、このような試行錯誤を繰り返す中で基本1系(上への変化)が以下の①から④へとさらに深化しました。

① 皮膚を取り足裏を感じるまで肩関節に対し軽く上方向の圧をかける→原理Ⅰ(足裏感覚)原理Ⅱ(推進力)±原理Ⅳ(裏の力)
② 背骨の操作でお互いに引っ張り合い相手が手を離せなくなる状態を作る→原理Ⅲ(同調)
③ 全身のゴムと遠心性の収縮を使い足裏をさらに強く感じる→原理Ⅳ(裏の力)
④ 自分のゴムを緩ませて相手の重心を数ミリ移動させる→原理Ⅴ(ゆるみ)

②はお腹で綱引きをする要領で肛門を収縮させながら仙骨をほんの少し後傾させ、前足底(特にⅡからⅤ足趾)で大地に楔を打つように踵をほんの少し浮かせて背骨から足までを繋げることで体幹を使って相手を引っ張ります。この時、私もよく注意されるのですが、上への圧がなくなり足裏感覚が消えてしまうと単なる引っ張り合いになるために、足裏を絶えず意識して下さい。これが決まると相手は手が離せない状態となり、相手と一体化(同調)する合気の真髄を味わえることと思います。

合気というものは上辺の形を真似ても会得することが難しく内部感覚を理解することが非常に重要なことですが、古より秘術の伝承というものは、師匠に一度技をかけてもらい、後は弟子が自ら創意工夫して体得するというスタイルが主流であり、何度も繰り返し技をかけてもらえたり、ましてそのノウハウを全て教えてもらえるということは皆無であったと思います。皆さんも是非深化する合気練功塾に合気の真髄を体験しに来て下さい。

とある塾生の雑記09 腕の力みを取る

合気練功塾では体全身のバネを使いゴムのような体作りを目指しています。初めの頃はこの感覚を掴むためにわざと動作を大きくしていましたが、ゴム感覚が出てくれば動作を小さくし、相手に気づかれないレベルにまで落とし込んでいきます。しかしながら、動作を小さくすればするほど相手の反応も小さくなり上手く合気がかからないため、つい腕に力みが生じてしまい失敗します。今回は、腕の力みを取る時の注意点について二つお伝えします。

一つ目は、私自身も癖のようによくしてしまうのですが、力んでしまった時に腕や肩をブラブラと揺らして完全に脱力するのではなく必ず一本のゴム感覚を残して体を緩ませるということです。おもちゃで『LAZY BONES/レイジーボーン』というゴムで繋がれた脱力人形がありますが、如何に最後までゴム感覚を切らさずに力みをとるかがポイントです。私自身のゴム感覚は単なるゴムではなく流動体のようなゴムで、それが腕先の方に絶えず流れているようなイメージです。合気練功塾ではこのような体を四元の合気のカラダ(空間感覚)、五元の合気のカラダ(内部感覚)といい合気練功のための修練体系の中でも上級レベルのものですが、練功を続けていると
自然とこのような感覚が出てきます。

二つ目は、腕の力みを感じた時ほど意識を体幹から足裏に持っていくことです。両腕を水平に上げた状態から腕を降ろす動作の場合、
手や肘から降ろすのではなく、肋骨の収縮(内肋間筋の収縮)を利用して肋骨が閉じるからその動きが肘から手へと伝わり、結果的に腕が降りていく。逆に気をつけの姿勢から腕を上げる場合は、肋骨を開く(外肋間筋の収縮)からその動きが肘から手へ繋がり自然と腕が上がるというように、日頃から体幹を使って腕を操作するという鍛錬をして、相手と繋がった状態で体幹から足裏へ落とし込み、腕はただひたすら相手と薄皮一枚で繋がっているだけに徹し、腕を上げたり下げたりという意図をなるべく出さないようにします。

合気の妙技を堪能するには、まず力みを取ることです。「力じゃないんだ」という脳内革命こそが、力みを取る一番の早道かもしれま
せん。

とある塾生の雑記 その8 裏の力で関節に圧をかける

とある塾生の雑記その8 裏の力で関節に圧をかける

女性や子供は関節が柔らかく筋肉量も少ないので、雑に扱うとうまく体を繋げることができず、合気をかけられないことがあります。
大抵はこちらの力が強すぎることに原因があるのですが、このような時に裏の力を使って繊細に相手の関節に圧をかけていくと、腕と体幹を一つの塊にすることができ合気がかかります。今回は、娘二人を練習相手に悪戦苦闘した圧のかけ方についてお伝えします。

現在、合気練功塾では基本1系を以下の4つに分解して練功を行なっています。
① 足裏を感じるまで、肩関節に対し上方向へ軽く圧をかける
② お互いに引っ張り合う「ここ」のポイントを作る
③ 遠心性の収縮を使いながら腕・肩・体幹を伸ばし、足裏をさらに強く感じる
④ 斜め懸垂の要領で、相手の重心を数ミリ移動させる

まず、圧のかけ方には「陽圧」と「陰圧」の2種類があります。①の場合は相手と接触した時に、下肢と体幹で姿勢を正すようにして肩関節に対し「陽圧」をかけます。この時、肩関節にかかる圧の力は自分の足裏を感じることができるだけの最小限にとどめます。
②は両足の指でしっかりと大地を掴みながら臍下丹田を斜め上に傾ける要領で腸腰筋を収縮させて、お互いに引っ張り合う関係を作ることで肩関節に対して「陰圧」をかけます。裏引っ張られた肩関節は組織(靭帯)の復元力により自ら肩関節への圧が高まり腕と体幹が繋がります。

最初の頃は、自分の形を作るだけで精一杯であったため圧が強すぎてしまい合気がかからず力技になっていました。「相手の力以上の力はいらない。」「皮一枚とる圧だけでそれ以上かけちゃ駄目。」色々とアドバイスをいただいたものの、なかなか娘を攻略することができずにいたのですが、ある時、赤ちゃんに触れるくらいの優しい力で繊細に行うと次女に合気をかけることができました。改めて力ではないんだなと実感した次第です。さあ、残るラスボスは長女です。まだまだ修行の日々は続きます。

とある塾生の雑記 その7

とある塾生の雑記その7 「ここ」とは?

最近、練功塾では合気がかかる瞬間の「ここ」というポイントを如何に早く作ることができるかを練功しています。今まで合気練功のための修練体系である合気のカラダや合気の原理を通して一つ一つ過程を確認しながら合気の疑似体験していたものを、本当の合気にするための一つの大きな転換点とも言えます。今回は、この「ここ」についてお伝えします。

柔らかな接触で相手の皮膚の遊びをとり、相手に察知されないレベル、あるいはもし仮に察知されても不快な感覚を与えないレベルの弱い刺激(裏の力)で相手の関節を詰め、筋肉を緊張させて一つの塊にし、二人で一つの重心を作るポイントが「ここ」です。この時接触点を通して私自身も合気がかかった状態になっているため、「ここ」とは自分に合気がかかるポイントとも言えます。

練功法は、ドアの取手に指をかけ体を繋げて背中のゴムで後ろに引っぱられながらも踵をあげます。「ここ」の感覚が身につけば踵をあげずに足の指で大地をしっかりと掴み重心を数ミリ前に持ってきます。今までは、相手を上げようとか下げようとか、手元の操作に感けて腕に余計な力が入ったり、腕だけでその関係性を作ろうとしてしまいがちだったのですが、接触した相手の力を借りながら背中と足を使って自分自身に合気をかければ、結果的に相手にも合気がかかります。合気の妙技の秘訣が「ここ」に隠されているのかなと思う次第です。

とある塾生の雑記その6 自然な繋がり方

とある塾生の雑記その6 自然な繋がり方

現在、合気練功塾では合気上げに繋がる基本1系(上への変化)を中心に練習しています。私自身、片手を持たれた時にどうしても腕に余計な力が入ってしまい、何かをしようとする意図が相手に伝わり、うまくいないことが多々あります。今回は、自然に繋がる方法について、色々学んだことをお伝えしたいと思います。

まず、前後に揺らす「背骨揺らし」の要領で、腕の力を抜いて体全体を使って相手の皮膚と接触し、骨に達しない程度の軽い圧で、且つ皮膚に過度の張力が生じないように数ミリほど皮膚を引っ張ります。実は、この皮膚が接触する時の力と方向のベクトルがポイントになります。数学の無理関数(y=√x)のグラフのようにやや上の方向に力をかけて相手の肩を詰まらせ、ほんの少し重心を前に持っていくのですが、この曲線の曲がり具合を非常に繊細にミリ単位でコントロールしなければなりません。上手くいけば「ココ」とか「カツン」という繋がった感覚がわかります。この時に探るように手をあれこれ動かすと失敗しますので注意して下さい。もしこの方法で上手く繋がることが出来なければ、腕を頼りに一歩前に足を出すとその瞬間に繋がります。これは足を出して片足というやや不安定な状態を作り、腕を頼りに相手に自分自身を委ねることで、自然に繋がることが出来るようになるからです。後は、この感覚を呼吸という動作に落とし込むことができれば、吸気一つで相手と繋がることが出来ますし、歩行という動作に落とし込めば、歩くだけで相手と繋がることが出来るようになります。

合気練功塾の「合気」は人と人との繋がりが生み出す「合気」で、その境地を楽しむことはとても素敵なことだと思いますし、もっと多くの人にこの境地を知ってもらえればと思います。