操体法と座取りのこと
松原先生から足圧法と操体法も教えていただいている。両法とも細かいコツや理論があり、たいへん難しい。合気の練功とともにこれら3つの技術の同時習得はなかなかチャレンジングな試みに思われるが、登山道が違うだけで登っている山は同じであることがジワリと分かってきた。
操体法は健側の筋を使わせて体のバランスをとる技術で、練功塾でも練習の終わりに行っている。ヒトは生活の癖や利き腕などが原因で一部の筋が硬結して、痛みが生じたり姿勢が歪んだりする。最初私は「一部の筋に力みがあったり偏っていたりでは合気の技にも影響があるだろうし、施術してもらうことでチームビルディングにもなるから良いことだ。」程度に思っていた。ところが操法を行う時にゴムの感覚(インナーマッスル)を意識して行うと、合気の原理で操作するときと同じ反応がある。深層筋をつなげてアウターまで働かすのは「原理Ⅳ・裏の力」である。これを行えば松原先生のいう連動操体法となる。
さて座取りである。立って行う時と感覚が異なりとても難度が高い。座ると受けも取りも重心が動きにくいし、足裏感覚は脛の感覚となる。合気の原理は自分自身がきちんとつながった「合気のカラダ」でなくては現象が出てこない。座った状態で全身のゴムの感覚を維持して相手に重心を預けることができるか。(集中講座を受けた方々、高いハードルと思いませんか。)そこで私は操体法が良い練習となっている。施術は基本的に座った状態で操作するので連動操体法を意識することで座取りの練習となる。さらに施術を受けている方は基本的に力で抗うという反応は出にくいため、力んで上手くいかなかったときのストレスも互いに少ない。
松原先生の合気の技術は日々進化して、最近はますます薄味になってきている。その切掛けを伺ったことがある。施術に来られた膝の悪いご婦人が立ち上がられる際、「先生、ちょっと肩を貸してくれる?」と言われ、肩に手を置かれた。先生はきっと体重が乗るだろうと構えたが、ただ触れただけの圧力でご婦人は立ち上がられたという。ほんのわずかな事で重心移動が楽になるならば、わずかな刺激で重心操作は可能なはず。そんな施術の一場面から薄味の合気はスタートしたと聞いた。
11112017