合気の現象化を起こすには、自分のゴム感覚を相手に共有させる必要がある。
そうすることで、ゴム感覚の無い相手でも、弾力の世界へ誘える。
まず手始めに、相手に対し、自分が作り出すゴム感覚を移していく。その時、相手の手に触れ、そこから自分がゴムを手首まで引いたとすれば、相手も接触点から手首までゴムを引いていることになる。それを肘・肩・肩甲骨・腰・膝と伸ばしていって、足まで引けば、相手も足まで引く事になる。
私自身、しばらく本気で、次の様に思っていた。相手と接触して、自分の世界の中で勝手に「手首・肘・・・足」と呪文のように唱えて、自分の中だけでゴムを繋げていけば、何故か相手も、自分が引くタイミングに合わせて、同じ位置までゴムを引いてくれるのだ、と。しかし、そんなテレパシー的な事が起こっている筈はなかった。
では、なぜ自分のゴム感覚が、接触点から相手に伝わっていくのか?と言うと、自分で接触点に発生した“点”のようなゴムをうまく伸ばしながら、相手にも伸ばさせているからである。自分が接触点のゴムを徐々に「手首・肘・・・」と引きながら、反対を持つ相手にもバランス出来る様なペースで引かせている。自分の方に引き過ぎないように、相手側にも均等にゴムを引かせる。その結果、五分五分のバランスを保ったまま、同時に足までゴムを張れるという訳である。この状態がお互いで引き合いながら、倒れないように支え合っている“超バランス”状態である。
そして、ゴムを引く時に必ず発生する感覚がある。「引く」と「引かれる」の相反する感覚である。ゴムは引っ張り続ければ必ず引き戻される。「引かれる」力は引き戻される時になって、急に出現するわけではない。引けば引くほど、引く分だけ、もれなく付いてくる。ほんの少しの引きに対しても、それ相応の引き戻しが発生している。だから、もし、「引く」感覚しかないのであれば、手段や方法なのか、意識なのか、何かが間違っている。ゴムと認識していないのか?そもそもゴムではないのか?分からないが、いずれにしても相手にゴム感覚を伝える事は出来ない。